60年代のブルーノートには昨日紹介したルー・ドナルドソンのようにソウルジャズ路線を歩む者もいましたが、あくまで主流だったのはモード~新主流派路線です。ウェイン・ショーター、ジョー・ヘンダーソン、ハービー・ハンコック、ボビー・ハッチャーソン、そして今日ご紹介するフレディ・ハバードらですね。ハバードはインディアナ出身で1958年にニューヨークのジャズシーンに気鋭のトランペッターとして颯爽と登場。デビュー作の「オープン・セサミ」や続く「ゴーイン・アップ」あたりはハードバップの香りが残る演奏でしたが、3作目の「ハブ・キャップ」そして第4作の本作「レディ・フォー・フレディ」はメンバー的にも演奏内容的にもこれぞ60年代モードジャズって感じです。
録音年月日は1961年8月21日。メンバーはウェイン・ショーター(テナー)、バーナード・マッキニー(ユーフォニアム)、マッコイ・タイナー(ピアノ)、アート・デイヴィス(ベース)、エルヴィン・ジョーンズ(ドラム)です。注目はもちろんモードジャズの中心人物であるショーターとタイナーの参加ですが、ユーフォニアムと言う珍しい楽器が入っているのも面白いですね。トロンボーンに似た金管楽器で吹奏楽ではよく使われますが、ジャズで使われるのはレアで、おそらくモダンジャズではこのバーナード・マッキニーが唯一の使い手ではないかと思います。ただ、このマッキニーはわりとあちこちに顔を出しており、同じデトロイト出身のドナルド・バード、ペッパー・アダムス、ユセフ・ラティーフと共演するだけでなく、スライド・ハンプトン、ハンク・モブレーらの作品にも顔を出しています。60年代半ばにキアネ・ザワディ(おそらくムスリム名)に改名しますので、そちらで記憶している人もいるかもしれません。

オープニングトラックはハバードのオリジナルである"Arietis"。2年後のインパルス盤「ザ・ボディ・アンド・ザ・ソウル」では"Aries"と微妙に違うタイトルで再演されましたが、意味はどちらも"牡羊座"だそうです。いかにもこの時期のブルーノートらしいモーダル&ファンキーなカッコいい曲で、ハバード→ショーター→マッキニータイナーと力強いソロをリレーします。2曲目"Weaver Of Dreams"は本作中唯一の歌モノスタンダード。この曲はハバードのワンホーンで、彼のブリリアントで歌心溢れるトランペットソロが堪能できます。序盤のバラード的な展開から中盤でテンポアップし、後半はマッコイ・タイナーのソロも交えてモーダルなプレイを披露します。3曲目"Marie Antoinette"はウェイン・ショーター作曲。フランス王妃にちなんだタイトルですが、曲はフランスっぽさは全くなく、いかにもショーターらしいクール&ファンキーなモードジャズです。
4曲目"Birdlike"は"バード(チャーリー・パーカー)のような"と言う意味らしいですが、私が聴く感じパーカーっぽさは全然なく典型的なモードジャズです。バックでずっと煽り続けるエルヴィン・ジョーンズのドラムが耳に残ります。ラストの"Crisis"はこの1ヶ月後にハバードも参加したジャズ・メッセンジャーズの歴史的名盤「モザイク」にも収録された名曲。3管が印象的なテーマメロディを奏でた後、ハバード→ショーター→マッキニー→タイナー→エルヴィンとシャープなソロをリレーします。よく考えればユーフォニアムをトロンボーンのカーティス・フラーに換えれば当時の3管ジャズ・メッセンジャーズと同じフロントラインですし、リズムセクションの3人(ダイナー、デイヴィス、エルヴィン)も同年発表のジョン・コルトレーン「オーレ」と全く同じです。当時のモードジャズの先端を走るメンバーが集まったなかなかの傑作です。